「国際情勢」
「徴用工」訴訟問題、慰安婦問題をはじめとする日韓歴史問題の本質は、突き詰めれば1910年の日韓併合条約が合法であったかということまで遡る。1965年の日韓国交正常化で日本が韓国に対して5億ドルの経済協力を約束し、請求権に関する問題は解決されているとの日韓関係の基礎となっているパンドラの箱を大法院が開けてしまったことが一番の問題だ。
ロシアのウクライナ侵攻はプーチンの危機感から起こった。冷戦が終結し、ワルシャワ条約機構解体後に旧ソ連の影響下にあった国々まで加盟したことでNATOの加盟国が倍増。隣国ウクライナで誕生した親欧米のゼレンスキー政権がNATO加盟を示唆したことが引き金となった。停戦の兆しはいまだ見えず、このままではいつ第三次欧州/世界大戦に発展するかもわからない。核兵器の使用も示唆し、中国への接近をはかるプーチン、頻発する北朝鮮のミサイル発射実験、中国の力による現状変更がひどくなっている状況もある。各国を巻き込んでこうした動きを牽制し、核兵器のない世界にコミットしていくのが世界唯一の戦争被爆国、平和国家を標榜する日本の使命だ。
オバマ政権の対中融和政策の失敗もあり、中国の台頭を背景に、日米同盟はこれまでになく盤石となった。同時に日本は米国にとって最も頼りになる同盟国として責任と役割の分担が求められている。その渦中のG7広島サミットで日米関係を基軸にウクライナ問題、対ロ、対中、対韓関係において、よりグローバルに、多面的、多様的な外交を展開していくべきだ。
外務省でアジア大洋州局長、外務審議官などの要職を歴任し、安倍・菅政権下で駐米大使を務め、現在は大学で国際法を教える杉山氏。日本の核武装に反対との立場から、核兵器のない世界にコミットするためのさまざまなシナリオについて解説した。このほか、駐米大使時代の裏話や強固な日米関係をつくりあげた背景にある日本経済界の努力についても言及。その後の質疑応答では活発なやり取りが行われた。次期米大統領選についての質問に対しては、各党の候補者について解説し、「誰が選ばれても日米関係に大きな影響はない」との見方を示した。